忙しい読者向けの要点
Lam Researchを見るとき、最初に置くべき言葉はAIではなく工程です。AIサーバーが増えると、HBM、DRAM、NANDの需要が増えます。そのメモリを作るには、半導体工場の中でより深く削り、より均一に膜を作り、よりきれいに洗浄しなければなりません。Lamはそのための装置を売る会社です。
直近の数字は堅調です。2026年3月四半期の売上高は58.4億ドル、GAAP営業利益率は**35.0%**でした。装置会社としてこの水準の利益率を出せるのは、顧客が単なる機械ではなく、歩留まり、工程の安定性、信頼を買っているからです。
一方で、市場もその強さをすでに評価しています。2026年5月5日14:24:39 UTC時点の市場データでは、LRCXの株価は269.54ドル、時価総額は約3,381億ドルでした。つまり、LamはすでにAIメモリと3D半導体の長期受益者として見られています。
大事な問いは一つです。Lamの強みは長く続くものなのか、それともAIメモリサイクルでよく見えているだけなのか。 私の答えは、Lamの競争力は本物です。ただしASMLのEUVのような独占ではありません。顧客工場の中に蓄積された工程経験、サービス関係、切り替えコストから生まれる強みです。
Lamが売っているもの
半導体製造は、簡単に言えば積む、削る、洗う、繰り返すという工程です。Lamはこの中で、エッチング、成膜、洗浄に強みを持っています。
エッチングは不要な部分を削る工程です。ただし物理的にこするのではなく、プラズマと化学反応で必要な場所だけを極めて細かく取り除きます。成膜は薄い膜を均一に作る工程です。洗浄は粒子や残留物を取り除き、歩留まりを守ります。
Lamの売上は二つに分けられます。一つは新しい装置を売るsystems revenueです。もう一つは既存装置から生まれるcustomer support-related revenue and otherです。2025年度には、システム売上が114.9億ドル、顧客サポート関連その他が69.4億ドルでした。後者は全体の約**38%**です。
この比率は重要です。Lamは一度装置を売って終わる会社ではありません。装置が顧客工場に入ると、部品、保守、アップグレード、工程改善の需要が続きます。この接点の多さが、Lamを単なる景気敏感な装置メーカー以上に見せています。
| 売上区分 | 2026年3月四半期 | 説明 |
|---|---|---|
| Systems revenue | $3.73B | 新規装置の売上です。半導体投資サイクルの影響を受けやすい部分です。 |
| Customer support-related revenue and other | $2.11B | 設置済み装置から生まれる部品、サービス、アップグレードの売上です。 |
| Total revenue | $5.84B | この四半期は新規装置と設置済み装置向け売上がともに伸びました。 |
3D構造が重要な理由
LamはAIよりも3D化で理解したほうが分かりやすい会社です。かつて半導体の進歩は、平面上により細かく回路を描くことが中心でした。今はそれに加えて、NANDを高く積み、HBMのようにメモリを重ねる方向が重要になっています。
構造が高くなるほど、工程は難しくなります。高層ビルに細い穴をまっすぐ通すようなものです。3D NANDでは、多くの層を貫く深く細い構造を正確に作る必要があります。少し曲がるだけでも歩留まりに影響します。
ここでLamの高アスペクト比エッチングが効きます。これは、深く細い構造をまっすぐ削る工程です。ただしエッチングだけでは足りません。どの膜をどう成膜したかが次のエッチングを左右し、洗浄の質も歩留まりを左右します。Lamの強みは、隣り合う工程をまとめて支えられることです。
AIサーバーが増えるということは、結局、より多くの高性能メモリと複雑なチップが必要になるということです。そのチップを作るほど工程難度は上がります。LamがAIの文脈で重要なのは、AIモデルを作る会社だからではなく、AI向けチップを作る工程が難しくなるほど必要性が増す会社だからです。
Lamの強みはどこから来るのか
Lamの強みを「技術力が高い」という一言で説明すると、少し粗すぎます。半導体製造装置で本当に大切なのは、その装置が顧客の特定工程で量産に使えると証明されているかです。
装置を替えるのは重い決断です。レシピを調整し、歩留まりを再び安定させ、エンジニアを教育し、部品体制も変える必要があります。価格が少し安くても、歩留まりが揺れればそのほうが高くつきます。
Lamの第一の強みは高アスペクト比エッチングです。深く細い構造を安定して作るには、プラズマ、化学、温度、チャンバー設計、顧客別レシピの経験が必要です。資金だけで短期間に追いつける領域ではありません。
第二の強みは設置済み装置の多さです。Lamの装置が顧客工場に多く入るほど、部品、サービス、アップグレード、レシピ調整はLam中心に回りやすくなります。現場で得た経験は、次の装置開発と顧客信頼にまた蓄積されます。
第三の強みは切り替えコストです。Lamの年次報告書は、顧客が工程性能、生産性、欠陥制御、サポート、総保有コストで装置会社を評価すると説明しています。価格だけで勝負が決まるわけではありません。
ただし、この強みは独占ではありません。Applied Materials、Tokyo Electron、ASM、SCREEN、SEMES、中国の装置会社など、強い競合は多く存在します。顧客は工程ごとに複数の装置会社を組み合わせます。
正確に言えば、Lamの強みは一つの圧倒的な装置ではなく、顧客工場の中に蓄積された工程経験と切り替えコストです。 この競争力はゆっくり積み上がり、ゆっくり弱まります。強い一方で、景気循環や規制の前で無敵というわけではありません。
| 競合企業 | 強み | Lamから見た意味 |
|---|---|---|
| Applied Materials | 最も広い装置ポートフォリオ | 顧客のfab予算をより広く押さえられる可能性があります。 |
| Tokyo Electron | エッチング、洗浄、コーター/デベロッパー | 複数工程で直接競合します。顧客別レシピとサポートが重要です。 |
| ASM / Wonik IPS | ALD、PECVDなど特定の成膜領域 | Lamがすべての成膜市場を支配しているわけではありません。 |
| SCREEN / SEMES | ウェット洗浄と顧客別洗浄ソリューション | 洗浄は歩留まりに直結しますが、競争も激しい領域です。 |
| 中国ローカル装置会社 | 成熟ノードと国産化政策 | 先端工程には差がありますが、中国売上には現実的な圧力になります。 |
- LibertyCorporaの見方Lamの強みはAIという看板よりも、顧客工場で積み上がった工程経験と、実績ある装置を簡単には替えにくい構造にあります。
数字で見る現在地
2026年3月四半期の売上高は58.4億ドルで、前年同期の47.2億ドルから大きく伸びました。システム売上は37.3億ドル、顧客サポート関連その他は21.1億ドルでした。新規装置と設置済み装置向け売上が一緒に伸びています。
GAAP粗利益率は**49.8%**でした。装置会社としては高い水準です。Lamが汎用機械ではなく、工程性能と信頼性を売っていることを示しています。
GAAP営業利益率は35.0%でした。しかも研究開発を削って作った利益ではありません。FY2026の9カ月累計R&Dは17.3億ドルでした。この業界では研究開発費は単なる費用ではなく、次の工程ポジションを取るための入場料です。
9カ月累計の営業キャッシュフローは44.0億ドルでした。設備投資と無形資産取得を差し引いた単純フリーキャッシュフローは約36.2億ドル、年率換算で約48.3億ドルです。
ただし、この数字は価格と一緒に見る必要があります。時価総額約3,381億ドルと比べると、単純FCF利回りは約**1.4%**です。Lamが現金を生めない会社という意味ではありません。むしろ非常によく稼いでいます。市場が将来の持続性をかなり高く評価している、という意味です。
在庫が示すこと
装置会社では、在庫の総額だけでなく、どこに在庫が積み上がっているかが重要です。2026年3月末のLamの在庫は、原材料25.1億ドル、仕掛品3.88億ドル、完成品11.1億ドルでした。
| 在庫段階 | 2026年3月 | 2025年6月 | 見方 |
|---|---|---|---|
| Raw materials | $2.51B | $2.66B | 原材料は減少しました。過度な先行調達への懸念はやや和らぎます。 |
| Work in process | $0.39B | $0.28B | 生産中の装置が増えています。需要対応または立ち上げのサインと見られます。 |
| Finished goods | $1.11B | $1.36B | 完成品は減少しました。需要が詰まって完成品が積み上がる形ではありません。 |
在庫構造は今のところ前向きに読めます。売上が増える一方で完成品が減ったからです。需要が弱くなる局面では、通常、完成品が先に積み上がります。次の四半期も完成品、売掛金、繰延収益を合わせて確認する必要があります。
何が崩れるリスクか
第一のリスクは中国です。FY2025の中国売上比率は約34%、FY2026の9カ月では**37%**でした。輸出規制と中国の国産化政策は、Lamの売上と利益率に直接影響する可能性があります。
第二のリスクはメモリサイクルです。Lamは3D NAND、DRAM、HBMの流れと合っていますが、メモリ投資は上下に大きく動きます。設置済み装置向けサービスが下支えしても、新規装置売上の変動性は消えません。
第三のリスクは競争です。Lamは強いですが、すべての工程を支配しているわけではありません。Applied Materialsはより広く、Tokyo Electronは複数工程で競合します。ASM、SCREEN、SEMES、中国ローカル企業も特定領域で存在感があります。
最後はバリュエーションです。良い会社でも、市場の期待が高すぎると株価は休むことがあります。ここから重要なのは、Lamが良い会社かどうかではなく、すでに高い期待を上回る証拠を出し続けられるかです。
これから見るべき点
今後は次の五つを見たいところです。
- 顧客サポート関連売上が四半期20億ドル前後を維持するか
- 粗利益率が50%近辺で維持されるか
- DRAMとNAND投資の回復が一時的ではないか
- 中国売上比率が規制リスクに対して高すぎないか
- 完成品在庫が再び積み上がらないか
この五つがそろって改善すれば、Lamの競争力は数字で確認できます。反対に、売上はよく見えるのに完成品在庫が増え、中国比率が高く、利益率が下がるなら注意が必要です。
LamはAI企業ではありません。AIに必要なメモリとチップを作る工程を支える会社です。その違いを見失わないことが大切です。










